ヤキモチを妬くナイヴス 來羅



「………」
「あれ?レインにーちゃん何してんの?」
「………ない」
「え?」
「俺のコーヒーゼリーがない」
「えぇ?僕知らないよ?」
「食ったの誰だ」
「別に良いじゃん、また買って来れば。何子供みたいこと言ってるの?」
「…………」
「…(うわっ、本気で起こってるよ)」
「…殺す」
「…(大人気ないなぁ…)」



+++++++++++



「…お前はいつも先生とこんなところで飲んでいるのか?」
「ん?いつもじゃねぇけど。最下層が一番見知った奴がいなくて良いんだよ」
「そういうものか?」
「そーいうもん」
「…しかし…此処は…見るからにガラが悪いと言うか…」
「何、お前、ビビッてんの?」
「そうじゃない。俺がいる時は良いが…何かあったらどうするんだ」
「何かって何だよ」
「何って…まぁ、その…」
「あ?」
「そのだな…えっと…」
「………お前ホント馬鹿だろ。あのな、仮にもNo.2だぞ。お前が心配するようなコトは起きねーって」
「違う。そういう意味じゃない」
「あ?」
「…いや、いい。もうこの話はよそう」
「なんだそりゃ。別にいーけど」
「……(そうだな…一般的に考えて、男が男に…)
「…………」
「……(いや、だが、普段のレインは隙がある…ましてや酒を飲んで酔っ払った状態では、この細い身体じゃとても抵抗など…)
「お前なぁ…」
「あ、す、すまない」
「大体お前が、普段俺がクリムソンと行ってるとこ行きたいって言ったんだろ?」
「…そうだったな」
「そんな気になんなら場所変えるか?」
「いや、大丈夫だ。すまない」
「ん。じゃ飲もうぜ。お前何飲む?」
「焼酎を」
「……初っぱなからか」





「…レイン、ペースが早くないか?」
「いつもこんなんだって」
「…それなら良いが…」
「アレ」
「?、どうした?」

「あそこにいんの…、おーい!オッサン!」

「!なんだ、この前のボウズじゃないか」
「よっ!今日も寂しく一人酒か?」
「うるさい!そういうお前こそ…って、ああ、相方がいたのか」
「……?レイン?」
「ん?あぁ悪ぃ。この前飲んだ時に一緒になったんだよ」
「なんだ、そっちのボウズは焼酎飲むのか」
「え、あ…まぁ…」
「オッサンもこっち来て飲めよ、どうせ一人なんだろ?」
「どうせってのは気に食わないが、そうさせてもらうか」
「ナイヴス、良いだろ?」
「…あ、あぁ」
「悪いな、二人でお楽しみのところ」
「別にそんなんじゃねぇって」
「………」

(…誰だ?妙に親しげだが…)

「オッサン何飲む?」
「そうだな、最初はビールにしとくか。で、あとでそっちのボウズと焼酎だな」
「つまみは枝豆だろ?」
「解ってるじゃないか」
「…………」
「どうした?」
「いや…」
「なんだ、お前さんはコイツと違って人見知りか」
「ノリ悪ぃんだよ」
「お前は最初っから変わらずだったなぁ。人懐っこいと言うか何と言うか」
「まぁな」
「だがもう少し用心しろよ?みんながみんな俺みたいな奴とは限らんからなぁ。お前は結構誰とでも気後れせずに接するタイプだろう?」
「わかんの?」
「まぁな。それに酒が入ったらそこいらの人間捕まえて絡む感じだな」
「酒癖悪ぃみたいじゃねーか。まぁ大体そんな感じだけど」
「……そうなのか?」
「ん?大体はな」
「…危ないだろう」
「あ?つっても今まで別にそれでどーこーなってねぇぜ?」
「これからだって解らないだろう」
「闇雲に捕まえてる訳じゃねぇって。人を見る目はあるんだよ」
「そういう問題じゃない」
「なんだ、まるでコイツの保護者だな」
「…違います」
「コイツいちいちうるせぇんだよ。ガキじゃねーっつーの。堅苦しい」
「一緒に暮らしてるのか?」
「一緒に…ってのもなんか違うけど、まぁそんなとこ」
「ならボウズ、俺んとこ来るか?俺は縛りはせんぞ。普段忙しいしな」
「え、いいのか?」
「!?」
「毎晩酒に付き合ってくれるのが条件だけどな?」
「全然オッケーだっつの!俺オッサンの子供になるわ」
「おいおい、こんなデカイ子供はいらんぞ」
「じゃあ今日は早速オッサン家だな!」
「レイン!」
「なんだよ」
「ダメだ」
「なんで?別にオマエといなきゃなんねぇ意味はねーし」
「だが…!」
「あそこにいる理由だってもうねーだろ。なら俺がどこ行こうが自由」
「ダメなものはダメだ…!」
「…ウッゼ。な?鬱陶しいんだよコイツ」
「うーん…何と言うか…。ま、そうカリカリするな。冗談だ」
「ちっ、冗談かよ」
「レイン!」
「うるせーな」
「…………」
「コラコラ、酒の場でケンカなんかすんなよー?」
「ケンカにもなんねーよ」
「………。…ちょっと手洗いに行ってきます」
「はいはい」




「…で?」
「ん?」
「お前等の関係はなんだ」
「関係って?」
「いやぁ…お前等のやりとり見てると、友人っていうにはちょっとなぁ…」
「どう見えんの?」
「…下手すりゃ恋人同士。か、もしくはあのボウズの一方的な片想い」
「ふーん…他人のオッサンからもそう見えんのか」
「で、実際は?」
「よくわかんねぇ」
「なんだそれは。まぁ別に関係性は構わんが、あんまり冷たくしてやるなよ?」
「良いんだよ、今アイツにムカついてるし。それに――」
「それに?」


「アイツは絶対俺から離れねーから」







「…何話してたんだ?」
「別に」
「仕事の愚痴をちょっとな」
「…そうですか」
「にしても暑いな」
「アルコール入ってるしなぁ」
「上脱ぐか。んしょっと」
「わっ、お前、ほっそいなぁ。ちゃんと食ってるか?」
「…なんでどいつもこいつも同じこと言うんだよ。食ってるって。つか別にガリガリな訳じゃねーだろ」
「まぁ確かにな。引き締まった細さだ」
「だろ?」
「それに白い。…オマケにスベスベか…」
「!」
「若いっていいなぁ…」
「良いだろ。今のうちに堪能しとけ」
「!?」
「しかしお前…女に間違われたことあるだろ?」
「あ?」
「まぁ服装は男だからアレだが、黙って立ってれば女に見える顔立ちだ」
「…まあ…ムカつくけど何回か…」
「ッ!!?」
「モテるだろう?」
「まぁな」
「―――ッッ!!」
「顔立ち良くて、酒好きでサバサバしてて…お前さんが女だったらなぁ…」
「オッサン男じゃダメなのか」
「出来れば女が良いなぁ…」
「俺ならいつでも空いてるぜ?」
「――ッ!レイン!」
「そうか?なら最終手段だな」
「ちょっ、さっきから勝手なことを…!」
「何が?別にオマエ関係ねーだろ?良いじゃねーか」
「そんな訳には…!」
「じゃ、聞くけど、お前は俺の何?」
「―――ッ!」
「答えらんねーじゃん。ハイ、終了ー!」
「…………」





「さぁて…そろそろ解散するか」
「だな。結構飲んだし」
「…………」
「んしょっと……おわッ!」
「レイ「おいおい、大丈夫か?」
「――っ!」
「悪ぃ。思いの外酒回ってたみてぇ…足にきた」
「まぁ大分ボトル空けたしなぁ。大したもんじゃないか」
「オッサン、悪ぃけど肩貸してくれ」
「レ、レイン、俺が貸す」
「俺は構わんぞ?」
「しかし…!」
「何ならこのままウチ来るか?」
「マジで?」
「!!?」
「俺はまだ飲み足りんしな」
「付き合うぜ!」
「そんなヘロヘロでか」
「暫く歩きながら風当たれば多少酔いも醒めるだろ」
「まぁな。だが無理はするなよ?倒れられたらかなわんからな」
「おう」
「レイン…!本当に行くのか…!?」
「何で嘘吐く必要あんだよ。つー訳で、今日は帰らねぇからシャンタオに言っといてくれ」
「ま、待て!」
「じゃーな。行こうぜ、オッサン」
「あ、あぁ」
「レイン!」

「……レイン」







「つー訳で、じゃあな、オッサン」
「お前なぁ…やり過ぎじゃないか?」
「良いんだよ。後で甘やかしてやっから」
「協力しろって言うから話合わせたが、あれは後味悪いぞ。あの目見たかぁ?…俺はすっかり嫌われ役だ」
「悪ぃな。また飲み付き合ってやるよ!」
「…今度はこういうの抜きにしてくれよ?」
「解ってるって。じゃ、俺先回りして帰んねーといけないから行くわ」
「おぅ。気を付けろよー?」
「ん。じゃーな」


『アイツは絶対俺から離れねーから』


「…ったく…大した自信だなぁ」


++++++++++


「遅い」
「――っ!?レイン?!」
「帰ってくるだけだろ?何してたんだよ」
「いや…別に…。というか、お前はあの人のところに行ったんじゃなかったのか?」
「行くわけねーだろ、バカ?」
「………バカって…」


「妬いた?」

「…は?」


「妬いたろ、オマエ」
「な、に…どういう…?」
「顔にモロ出てて面白かった」
「……??」
「分かりやすい。単純」
「…?え、だから、どういう…??」
「メッチャ焦ってたもんな、オマエ」
「???」
「あー面白かった」
「……レイン、俺はいまいち状況を把握出来ていないんだが…」

「仕返し」
「仕返し?」
「お前、俺のコーヒーゼリー食ったろ」
「コーヒーゼリー?」
「冷蔵庫に入ってたやつ。見たぞ、お前の部屋のゴミ箱に空の容器捨ててあった」
「…そういえば、食べたかもしれんな」
「アレ俺の。マジでムカついた」
「えっと……?」
「だからその仕返し」
「……コーヒーゼリーを食べた?」
「ん」
「……………」
「……………」

「…つまり?」
「あ?」
「飲み屋での会話は…」
「全部冗談」
「―――――」


ぎゅうぅぅっ


「く、くるしっ」
「…よかった…」
「何が」
「…全部一方的だったのかと…」
「…………」
「本当にお前がいなくなるのかと…」
「ばーか」
「……よかった…」
「…んな泣きそうな顔すんなよ。俺が悪いことしたみてーじゃねーか」
「………いや、しただろう」
「何で?お前が俺のコーヒーゼリー食うからだろ?」
「…俺がどれだけ不安になったか」
「知ってる」
「大体コーヒーゼリーを食べたくらいで…割に合わんだろう」
「くらい、じゃねーよ。その分の俺の怒りだこの野郎」
「…………」
「…………」
「…レイン、触って良いか?」
「もう触ってんじゃねーか」
「もっと」
「………オマエ、どんだけ俺のこと好きなの」
「言わせたいのか?」
「…いい」
「……もう他の男に触らせるんじゃないぞ」
「そりゃ無理だろ。クリムソンなんて診察ん時ベッタベタ触るぞ」
「ダメだ」
「おい」
「先生には、俺から言っておく」
「うっわー」
「いいな」
「俺が気を付けてても触られたらどーすんの」
「……斬る」
「…お前、重たいって言われねー?」
「………っ」
「…………」

「嫌か…?」
「うんにゃ」




「上等」









自信満々のレインが大好きです(*´∀`*)




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