H  らいる



『いくら好きな相手だからといって――』


  (な…何を言っているんだゼクスはッ!!誰が、誰を好きだと――ッ)


『イチャイチャイチャイチャ鬱陶しいよ』


  (イチャイチャって…ッ!!俺はただ、レインが危なっかしくて目が放せないだけで…ッ!!)


『お前な、ほんっとーーッに、今日はおかしいぞ!??自分の行動をよ〜〜く思い返してみろよ』


  (だから、それはゼクスがレインにセクハラをするから――)
  (―――いや、…だから、どうだと言うんだ!?レインは男だ!ゼクスもからかっていただけだ!!)
  (そうだッ!!何故俺はあの時妙に不快感に襲われたんだ!?――いや、いやいやッ!!違うッ!!
  あれは親父相手にレインが気の毒に見えてだ!!そうだ!それで腹が立って――ッて!!!違うだろうッ!!?
  何故腹が立つんだッ!!いいようにされているレインをみてムカムカしたとか―――だから違うッ!!!
  ムカムカとかはおかしいッ!!!明らかにおかしいだろうッ!!!しっかりしろ!!)


『ん…』


  (―――ッ)
  (た、た、た…ッ、確かにッ!あの時はドキッとした!したが――)
  (――…あの時上を向いたレインは水に濡れていて――伏せた長い睫毛が妙に色っぽく感じるのに、
  無防備に目を瞑っているからそれがやけに可愛く見―――ッ!!!!???!?!?)
  (おッ、落ち着け!!自分のことだろうッ!!?何を考えているんだッ!!)
  (可愛いとか色っぽいとか!!?レインは男だッ!!睫毛が長かろうが肌の色が白かろうが、
  手を廻すと調度良い細い腰をしていようがッ、――ッて!!だからなんだッ!?調度良いとかッて!!!!)
  (落ち着くんだ…落ち着け…落ち着くんだナイヴス…。冷静になってよく考えろ…)

  (――――――)

  (――――――…)
  
  (――――――……)

  (―――――――……ッ!!)

  (〜〜〜〜クソッ!!わけがわからんッ!!確かにッ!!確かに俺はレインの髪を結ったり、
  浴衣を着せたりしたゼクスに不快感を覚えたッ!!)

  (先生の後ろに隠れたレインを見てどうしようもない怒りが込み上げてきたッ!!
  あまつさえレインの浴衣を破ってそこから白い肌が見えた瞬間に頭が真っ白になったのも事実だッ!!!)

  (――だがッ!!レインは男だッ!!)

  (男なんだぞ…レインは男だ!!)


  (…………………)


  (―――くそッ!!言い聞かせている時点でアウトだろう!!?)

  (―――俺は…一体どうしたんだ…)

  (――――――…)

  (――――――……)

  (――――――やはり…そう、なのか…?)


  (俺は…レインのことを……?)


「―――ん?」

  (レインが部屋にいない…?いつの間に出て行ったんだ?)
  (こんな時間に…心配だな、見てくるか…)








カラカラカラ…


「あれ?ナイヴスじゃん、オマエも来たのかよ?」
「あ、ああ。折角の温泉だしな」
  (なんだ…風呂に入りに来ただけか。良かった)


「あ、もしかして俺が起こしたか?音たてねーように出てきたつもりなんだけど」
「いや、たまたま目が覚めただけだ。オマエの姿が見えなくて少し探したが」
「そりゃー悪ぃな…って、謝んのもおかしいか。風呂くらい好きな時に入らせろよ」
「別に責めているわけじゃない。…俺も、もう一度入りたかったしな」
  (これは嘘だが…)


「ふ〜ん。ま、いいけど。深夜に入る露天風呂ってのも中々だな」
「おっさんくさいと言っていなかったか?」
「温泉旅行ってのがな。別に温泉が悪ぃだなんて言ってねーし」
「そうか。…それよりも、大丈夫なのか?」
「?」
「いや、先生に貰った酒――あれは相当強いものだったんだろう?ちゃんと抜けているのか?」
「んー…まだちょっとぼーっとしてっかもしんねー」
「な――ッ!?そんな状態で風呂なんて入るなッ!!上がるぞ!!」
「いてぇッ!!引っ張んな!!だいじょぶだっつーの!!!」
「だが――」
「これくらいなんともねーよ。すげー度数だったみたいだからあん時は目ぇまわしちまったけどな。
クリムソン――あんの野朗…絶対ぇ仕返ししてやるッ!!」
「大丈夫だと言うのなら、もう暫くは様子を見るが…あまり長時間はやめておいた方がいいぞ」
「うるせーなぁオマエはホントに。今日一日散々だったぜ」
「……すまない」
「謝んなくていー。オマエのおせっかいには慣れた」
「…おせっかい?」
「そ。ノワールん時もそうだけど、オマエほんとに構うの好きだな。しつこいと嫌われっぞ」

「―――――ッ!!!」

「大体オマエはよ――って、オイ、んな深刻な顔すんなよッ!?」
「――――……」
「ちょッ、マジで落ち込んでんじゃねーって!!」
「……………」
「あ、あ〜〜…あの、だな、だ、大丈夫だと思うぜ?ノワールはオマエがそんな性格だって、わかってるし。
ちょっと小うるさいかもしんねーけど、悪意があるわけじゃねーしな?」
「――――も…」
「だから――ん?」
「――レインも…俺のことをしつこくて、嫌いだと思っているのか?」
「――――は?」
「レインは…今日一日、俺が――しつこくて嫌いだと思っていたのか?」
「へ?いや、なんの話だ?俺はノワールの――」
「ノワールのことじゃない。俺は今オマエに聞いているんだ」
「え、と?何だ?どっからそうなった?何の話だ???」
「オマエが今言ったんだろう――しつこいと嫌われる、と」
「い、言ったぜ?だから――」
「だからレイン――オマエは今日一日俺といて、俺のことを嫌いになったのか?と聞いているんだ」
「な―――――??」

「レイン…どうなんだ?」
  (ああ――認めざる得ないな)

「ど、どうって…なんでオマエ、そんな…」

「答えてくれ。俺のことを嫌いになったのか…?」
  (レインの一言で…こんなに動揺してしまった自分を)


「や、やめろよ、ちょッ、オマエほんとに今日はどうしたんだ?」

「レイン」
  (俺は確かに――間違いなく……)

「な、な、なな、なんだ、よ?ち、近付くなって!近いッ!!近すぎるッ!!!」



「レイン――お前が好きだ」


「――――――――!!?」



「……すまない、口が、その、滑った……」
「――――――――」
「――が、レイン、つまりはそういうことらしい」
「――――――――」
「だから、俺はオマエに嫌われるのは困る」
「―――――……ッ」
「オマエにしつこいと思われるようなことをしてしまったのかもしれないが
――出来れば嫌わないで貰えると助かるんだが…どうだ?」

「―――……ッッッ」
「レイン?」
「―――……ッ、ッ」
「どうした?顔が赤い――熱でもあるのか?いや、やはりさっきの酒が残って―――」


「ッッッぎゃーーーーーーッ!!!!!」

「!?」

「さッ、さッ、触るなッ!!寄るなーーッ!!」
「レインッ!?」
「くッ、来んなッ!!近付くんじゃねーーーッ!!」
「―――ッ」
「んな顔もすんなッ!!!」
「レイン…ッ」
「聞こえねーーッ!!聞こえなかった!!!俺は何も聞いちゃいねぇッ!!!」
「レインッ!!」
「うるせえッ!!近付くんじゃねーっっつってんだろーがッ!!」
「レ…」
「〜〜〜〜あがるッ!!」
「!?」
「あがるッ!!んで寝るッ!!」
「なら――」
「浴衣くらい一人で着れるッ!!オマエは一晩湯船にでも浸かってやがれ!!いいなッ!!ついてくんなよッ!!!」
「―――ッ!!」
「――くそッ!!なんだってんだよ!!!」


カラカラカラ――バンッ!!!!


「……レイン」
  (逃げ…られた……)


「レイン……俺は……」
  (拒絶されたのか……?)


「―――くそ…どうして――…」


  
(口にしてしまったんだ――…)











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