�F　　らいる



「――で、結局髪を洗って貰って、その後風呂上りには乾かして貰って、
さらに浴衣まで着せて貰ったんだね」
「…うるせぇ」
「イチャイチャするのは構わないけど、ノワールの前ではやめるように。目の毒だから」
「イチャイチャしてねぇッ！！！ってか、イチャイチャってなんだよイチャイチャって！！？」
「そのまんま言葉の通りだけど」
「アイツが勝手にやってるだけだッ！！」
「それにしたってレインの許可がなければ、できないことなんじゃないかな？
君が思い切り抵抗したら、いくら体力馬鹿のナイヴスでも無理だろう」
「体力馬鹿って――まぁ、そうだけど」
「ということはレイン、君も満更ではないということになる」
「よーし、歯を喰いしばれ」
「そうやってすぐに暴力で解決しようとするのはやめなさい――で？」
「あ？」
「だから、どうして本気で断らないのかな？」
「そ、それは――アイツ、何か真剣な目ぇしてて恐ぇし…」
「…あの嫉妬に狂って血走った目を、真剣と捉える辺りがレインの甘いところだねぇ」

「は？」

「いや、なんでもないよ。こっちの話」
「なんだよ？」
「いやね、じゃあ例えばだ――」
「？」
「例えば――ナイヴスじゃなくて、私や他の誰かが同じ行動をとったら君はどうするんだい？」
「？…意味わかんねー」
「いいかい、例えばの話だからね！私がレイン、君の髪を洗いたいとか、
乾かしてあげたいとか、一緒に風呂に入りたい――とか言ったらどう思うかな？」
「キモイ」
「そりゃあそうだ。私だって気持ちが悪い。見たまえこの鳥肌を」
「なら言うな」
「言わなきゃ説明にならないじゃないか」
「？」
「君は私には気持悪いと言ったけど、ナイヴスにそれをさせているのは何故？」
「は？」
「なんだかんだ言って、ナイヴスには許したじゃないか。私だったら許さないだろう？」
「―――――…」
「どうだい？それを考えたら――」

「……別に、多分いいって言うぜ」

「――は？」

「だから、いいって」
「え？？」
「気色悪ィことこの上ないけど、ようするにさっきのナイヴスみたいな感じで、クリムソンが言ってきたらだろ？
全然知らねーヤツからならごめんだけどな。とりあえずオマエのことは知ってるし」
「…………へ〜〜え、ああ…そう…」
「なんだよ？自分からふっといてその微妙な顔は？」
「いや、なに、ちょっと想定外だったから」
「何がだよ？」
「いや〜〜これはこれは…うんうん、そうか〜〜…――ナイヴスも可哀想に」
「？？？」
「レインが鈍いのか気付いてないのか――はたまた全くその気がないからこその解答なのか…」
「なんなんだよッ！？」
「まあまあ気にしなくていいよ。それよりレイン」
「何だよ？」
「私的には面白いから放っておいてもいいことだけど、まあ少なくともナイヴスよりも付き合いが長いから、
おせっかいというか親切というか――」
「回りくどい言い方すんなッ！！何が言いたいんだよ！？」
「うんうん――ナイヴスはね、絶対にムッツリだから」
「――――は？」
「だから気をつけなさい」
「……なに言ってんのオマエ？」
「わからないならわからないでいいけど、シャンタオの前では気をつけるように。教育に悪いから」
「？？だから、何を…？？」

「レインッ！！」

「―――出たね」
「何だよ、血相変えて」

「…急にいなくなるから心配した」
「はあ！？俺が何処に行こうが勝手だろッ」
「私は無視かい？」
「部屋に布団が敷かれていた。戻るぞ」
「いてッ！！何だよッ！？引っ張んなッ！！！」
「…完全に無視だね」
「湯冷めしたらどうする」
「しねーよッ！！人を何だと…ッ」
「ナイヴス、無理強いは良くないよ〜〜」
「俺達のことは放っておいて下さい」
「『達』って何だよッ！？勝手に一括りにすんなッ」
「あ、ちゃんと視界に入ってたんだね」
「レイン行くぞ」
「だーーかーーらーーーーッッ！！！」

「……こうして一人残された変態医師は、一人寂しく佇むのでありました」

「――ちょっと、勝手にヘンなナレーションを入れないでくれるかい？エル」
「的確であったと思いますが」
「あと人の事を変態医師呼ばわりしない」
「事実ですから」
「はあ…本当にハンターときたら碌な人材がいない」
「それをノワールに伝えましょうか？貴方からの言葉として」
「ノワールは別だよッ！！別！！」
「煩いですよ。まあいいでしょう、私達も戻りましょう」
「男だらけのむさ苦しい部屋なんて戻りたくもない。そうだ――ノワールの部屋に…」
「血の雨を降らせたいのであれば御自由に」


「いいかげんに腕離せッ！！」
「なんだ？痛かったか、すまん」
「ッだぁぁぁあぁーーーッ！！腰に手を添えんなーーーッ！！！」


「…あれはセクハラでは？」
「別にいいよッ、男が男にセクハラしようがしまいがッ！」
「まあ私も構いませんが――あの調子の二人と同室というのはあまり好ましくありませんね」
「――そうだったッ！！
深夜に二人でイチャイチャイチャイチャされようもんなら気色悪くて眠れやしないッ！！！」
「レインは嫌がっているようですが」
「押しに弱いだろうあの子はッ！ホラ行くよッ！！」
「？」
「ナイヴスよりも先に戻って、寝る位置を決めてしまおう！」
「ナイヴスとレインを離すのですね」
「そうだよッ！！」
「―――無駄なような気がしますが…反対する理由はありませんね」


「離せこの馬鹿ーーーッ！！！」





続

全く自覚ナシレイン＆同じく全く自覚はないけど本能で行動するナイヴスでふ。
なんだかんだいってレインは気を許した相手なら押しに弱いと思うでふ。