C らいる
「ちょッ!痛ぇッ!!引っ張んなって!!オイッ!!」
「――――」
「聞いてんのかッ!?」
「――――」
「〜〜ッ、このッ、ナイヴス!!!」
「―――はッ!?」
「『はッ!?』じゃねぇっ!!痛いって言ってんだろーがッ!離しやがれッ!!」
「あ……ああ、すまない」
「なんなんだよお前はッ」
「―――…よくわからん」
「はぁッ!?ボケてんのか!?」
「………わからんが…」
「あん?」
「…わからないが、その――妙に不愉快になった…」
「なんだよそりゃ」
「俺にもよくわからない」
「テメェ自身でわかんねーことにオレ様を巻き込むなッ!!」
「それはすまないと思う」
「とか言いながら掴んだままだし」
「え?」
「だーかーらーーッ!!この手は何なんだよッ!この手はッッ!!?」
「――ッ!す、すまん」
「――ったく、いってぇな畜生。どんだけの力で掴んでんだよッ、赤くなっちまったじゃねーか」
「……すまない」
「ッち、別にいい。オラ、直すんだろ?さっさとしろよ、ッたく。メシ冷めちまうだろーが」
「あ、ああ」
「レイン、帯を持っていてくれ」
「ああ」
「――…」
「あ、あんまキツクすんなよ。メシ食ってんだし」
「……それは駄目だ」
「なんで?」
「ゆるくしていると着崩れる。またさっきのようになったらどうする」
「さっき?」
「…ゼクスに触られていただろう」
「気色の悪ィ言い方すんな!別にゆるかったから触られたわけじゃねーし!!」
「お前は少し警戒心というものを持ったらどうだ?」
「はぁッ!?何言ってんのお前!?」
「あんなのほほんとした顔で無防備に懐いているから、あんな事になるんだ」
「んなッ!?誰がのほほんだッ!!それに懐いてねぇッ!!!」
「動くなッ、崩れる!」
「――ッ、」
「――ただでさえ脱がされやすい衣服なんだぞ、浴衣は…」
「――は?」
「どこからでも進入可能な薄い布地を一枚身体に巻いた状態で、あんな風にいいようにされて」
「――何、言ってんのお前?」
「それにさっきだって、いとも簡単に髪を触らせて――注意力散漫にもほどがある!!」
「おい、ナイヴス、」
「敵である相手に背後を取らせて、あまつさえ無防備にも首を曝け出して」
「コラ、てめぇ、人の話を」
「それに知っているのか!?髪を触らせるという行為は、一般的に余程気心のしれている相手にしかしないんだぞ!!
それなのにお前は…ッ!!」
「散髪に行ったら全ッ然知らない相手に触らせるだろーがッ!!」
「そういう話をしているんじゃないッ!!」
「うおッ!?」
「いいな、レイン?これからは俺がやるから軽々しく誰にでも触らせるんじゃない」
「いきなり怒鳴るなッ!吃驚すんじゃねーか…って、――はぁッ!?」
「髪を切りたい時も俺に言え」
「何でそんな話になるッ!!?」
「安心しろ。ヤタガラスは使わん」
「当たり前だッ!!って、違うッ!!お前の言ってる事の意味がわかんねーよッ!!」
「…理解力が乏しいのかお前は」
「誰に言ってんだッ!アホかッ!!」
「アホとはなんだ。失礼だぞ」
「アホで駄目なら馬鹿?何で俺が髪切るのにお前の許可がいるんだよッ!?
さっきからマジでわけわかんねーよッ、お前!!」
「お前があまりにも阿呆だから、心配してやっているのに馬鹿とはなんだッ!!」
「阿呆はお前だーーッ!!」
「とにかくだッ!!いいな、レイン!浴衣の着付けも髪の始末も俺がしてやるから、
金輪際、二度と、ゼクスには頼むなッ!!」
「ンなもん、オレの勝手だッ!大体てめぇが最初に断ったんじゃねーかッ!!」
「それについてはすまないと思う」
「いきなり冷静になるなッ!!あーもうッ!なんなんだよお前のそのテンションっ!?」
「――あのことについては謝る。だからもうゼクスには頼まないと言え」
「お前さっきからおかしいこと言ってるってわかってねーのかよ!?」
「レイン」
「だから――ッ!!」
「レイン」
「――このッ、」
「……頼む」
「〜〜〜〜〜ッ!!わぁったよ!ちくしょうッ!!なんなんだよホントにッ!もういいッ、覚えるから教えろッ」
「何をだ?」
「浴衣の着方だよッ!今度からは自分で着る!それでいーんだろッ!!髪も自分で縛る!!
誰の手も借りねーから安心しろッ」
「それは違う」
「あぁッ!!?」
「俺がやると言っただろう。ゼクスの手を借りるなとは言ったが、着付けをしないとは言ってない」
「はぁッ!!?」
「ほら、帯を貸せ。それと少し手を上にしてくれ」
「へ?あ?こうか??」
「暫くそのままで――…確かに帯がかなり余るな。こっちでまとめるか…」
「………なぁ」
「なんだ?」
「お前ホントに何がしたいんだ?」
「なんのことだ?」
「いや、だから――」
「よし、と…どうだ?」
「え、あ、ああ、これくらなら平気だぜ」
「そうか、じゃあ次は後ろを向いて座ってくれ」
「?」
「髪も直すと言っただろう」
「いや、自分で――」
「俺がやる」
「…なんで?」
「ついでだ。気にするな」
「いや、でも、な」
「ほら、絡まっている箇所がいくつもある。お前のことだ、力技で梳いて髪を抜いてしまうんだろう」
「するかッ!!大体メシ食ったら洗うんだし、このままで構わねーっつうの!!」
「駄目だ。とりあえず梳くだけでも俺がやる」
「梳くだけでもってな、」
「ゼクスには触らせて俺は駄目だとでも言うつもりか」
「はぁ!?何言って――ッて!?え?オイッ、お前、なんか恐ぇぞ?」
「いいから梳くぞ」
「???」
(何でこんなに機嫌悪ぃんだ?ってか、怒ってんだよな??)
(怒りのゲージが女湯覗いた時よりも大きい気がするのは気のせいかッ!?)」
「思ったより絡まってはいないようだな。良かった」
「―――…ああ」
(あれ?機嫌直ってねーか?)
「レイン、食事の後の風呂は一緒に行くぞ」
「は?なんで?」
「先生達の様に勘違いする輩がいるかもしれん」
「なんの話だ?」
「いや、気にしないでくれ。安全の為にも俺が一緒に入る」
「安全?」
「こっちの話しだ」
「???」
「とにかくいいな」
「?別に風呂くらいいいけどよ、ノワールはいいのかよ?クリムソンから目を放すとまた暴走すっぞ」
「それは…ッ!!―――いや、いい、ソードがいる…それに今は此方の方が―…」
「こっち?」
「あ、いや、気にするな」
「?」
「よし、出来たぞ」
「さっきと違う…」
「何故ゼクスがしたのと同じ髪型にしなければならないッ!!!」
「わッ!!?さっきからなんなんだよッ!?いきなり怒鳴んなッ!!――吃驚した」
「あ…すまん」
「っとに今日のお前、ヘンだぜ?もーいいけどよ。メシ早く食おーぜ」
「そうだな――と、」
「ひゃッ!!?」
「――――ッ!!??」
ドキッ!?
「な、ななッ!!何すんだてめぇッ!!!」
(ちくしょうッ!!マジびびった!!)
「―――ッ、い、いやッ、か、髪を耳にかけようとした、だけだッ!!」
(そうだ、それだけだ!別にゼクスと同じことをしようとしたわけではないッ!断じてないッ!!!)」
「すっげーゾワッてなったぞ!?口で言え口でッ!!」
(なんかコイツの手付きヤバくねぇかッ!?)
「す、すまん…」
(な、何なんだ……??)
「あーもうッ!!二度とすんなよッ!!オラッ、行くぞ!!」
(――おっさんに触れた時はくすぐったいだけだったのにッ!!)
「あ、ああ…」
(今のレインの顔が…頭から離れん…)
「「…………」」
((ドキドキドキドキ…))
続
レインのドキドキは悪寒のようなドキドキ(笑)
身の危険を感じちゃって下さい(笑)