B  らいる



「ほう…中々豪勢じゃなか」
「…量が凄い」

「大丈夫だよノワール。食べきれない分は私が――ぐはッ!!?」

「ノワール来い」

「ソード…クリムソンが――」
「放っておけ」
「そうですよ。相手をすれば付け上がるだけです。座りましょう」

「ちょっと待て」
「なんです?ナイヴス」
「お前は食べる必要はないんだろう?」
「食べられなくとも、その場の雰囲気を楽しむ事はできます」
「無理して此処に居る必要なんて全ッ然ないよッ!!そこをどきたまえ!!」
「うわッ!?…もう復活したんですか先生」
「ノワールの隣は私だって決まっているんだよ!」
「誰が決めた?来い、アーロン…」
「ソード、食事中にCAは…ッ」
「黙っていろノワール」
「嫌だねえ!何でも力で解決するしかない輩は。でもいいさ、そっちがその気なら私だって黙ってはいないよ」

「二人とも大人気ないですよ」

「とか言いながらそこに座るなエルっ!!」



「……な〜にやってんだか」
「あいつ等もこりんな」
「ほっといて食おーぜ、腹減った」
「そうだな。折角の料理が冷めてしまう」
「よっしゃ!――いただきます」
「――」
「?なんだよ」
「いや、見かけの割にはきちんとしてると思ってな」
「見かけの割にはってなんだよ!?」
「で、飲むか?」
「ビール?」
「手始めはな。後で熱燗を貰う」
「あ、じゃあそん時冷酒も一緒に」
「お前さんが冷酒を飲むとは思わなかったな」
「メニューに合わせた方がいいだろ」
「確かに」



「ノワール、危ないから私の後ろにおいで〜」
「ノワール、必要ない」
「ノワール…この人達は放っておいてこちらへ」

「ノワール!安全の為に俺の横に!」

「え…と…」



「こら、何を除けてる」
「あんま好きくねーんだよ」
「うまいのに。こっちと交換するか?」
「いいのか?さんきゅ」
「この味の良さがわからんとは子供だな」
「うるせ!親父と一緒にすんな。あ、コレうまい」
「どれだ?――ああ、確かに」
「な?(親父はもう完全にスルーか)」
「こっちはどうだ――…う」
「ん、うまい!」
「――……」
「なんだ?甘いモン駄目なの?じゃあこれと替えるか?」
「食べれん事はないが…菓子でもないのに甘いのは、な。すまんな」




「ノワールは渡さん」

「渡さんってねぇ君、そんな所有物みたいにっ!!」
「そうですよソード。何様ですか」
「エル…お前結構はっきりと言い難い事を言うな…」

「あの…みんな…(折角作ってもらった料理が冷めてしまう…)――あ!」



「そーいやお前さん、箸も使えるんだな」
「ん〜〜まぁな(ガキの頃に必要最低限のマナーは叩き込まれたし)」
「綺麗に食べる相手との食事は楽しいもんだ」
「そっか?」
「しっかり食ってるしな。どうもうちの連中は食が細くていかん。酒もやらんからつまらんもんだ」
「ふ〜ん…(そりゃ上司とメシなんて面倒だろうしな)」



「み、みんなっ、私は――レインの横に座らせてもらう…ッ(逃)」

は?



「レイン、隣、いい?」

「あー?別に構わねーぜ。ってかお前ら遅いから先に始めてんぞ」
「おーノワール、お前もちゃんと食えよ」
「う、うん、いただきます」

「これうめーぞ。甘いの好きだろ?」
「…あ、本当だ。美味しい…」
「な?」
「二人して甘いもの好きか」
「何だよ文句あっか?」
「誰も文句なんて言ってないだろう。――にしては肉付きが悪いだろう」
「うひゃッ!!?」



「!!!!!!」


「おや、ナイヴスがまたしてもおかしな反応を」
「あらら〜すっかりあの二人のこと忘れてたねぇ」
「ノワール…」
「いい年してしょげないで下さいソード。うざいです」
「全くだ、鬱陶しい」
「そういう貴方もかなりうざいです。ノワールに近付かないで下さい。キモイです」
「君ねぇッ!!そういうこと言うッ!!?」



「くッ、食ってる最中に変なトコ触んなッ!!」
「ははッ、生娘じゃあるまいし照れるな」
「照れてねぇ!ってか生娘って古いッ!!親父発言!!!」
「なんだ?定番の台詞でも言って欲しいのか?」
「は?」
「『よいではないか、よいではないか〜〜』」

「!!!!!???」


「『あ〜〜れ〜〜およしになって〜〜〜!』――ッて!!アホかッ!!ぶはッ!!ちょッ、やめッ!!くすぐってぇッ!!!」
「ん?ここか??」
「(…ゼクス…楽しそうだ…)」

「ふはッ、ちょッ、ひゃぁッ!!」


「〜〜〜〜〜〜〜ッ!!!!」

「ゼクス…もう酔っているのか?(呆)」
「おやおやレインってば、すっかり着崩れちゃって」

「レインは色白で女顔ですので、卑猥に見えますね」
「エル――言葉を選べ」
「おや?間違っていましたか?」
「いんや〜、あながち外れてはいないんじゃない?」

「ふはははッ!ッん、くッ、はぁッ、やめ…ッ――うあッ!!」

「ゼクス…レインが苦しそうだからやめてあげて」

「わははは、お前等と違って新鮮な反応だな〜」

「こんのッ、クソじじい――ッ!!」

「じじいとはなんだ」

「うはははは―――ッ!!!」



ダンッ!!!!!!



!!?

「なんだぁ?今の音は―――ッうおぉッ!!?」

「…これは…ヤタガラス?」

「…へ?」


「あらららら」

「おやまぁ」
「――見事だな」

「なッ、なッ、ナイヴスっ!?おまッ!!?危ないだろうッ!!あと少しで刺さるところだぞッ!!」

「ゼクス…少し切ってる」


「ナイヴスの放ったヤタガラスが、ゼクスの頬を掠めてゼクスの首元ギリギリのラインで床に刺さっているみたいですね」
「説明ありがとうエル。惜しかったねぇナイヴス」

「惜しくないッ!!何を考えとるんだッ!!畳に穴が開いたぞ、ってそういう問題じゃあない!!」

「ゼクス、動くと危ない…」

「はぁ――助かった…ぜぇぜぇ」


「どうしてナイヴスはいきなりヤタガラスを投げたのだ?」
「さあ?私には理解不能です。…もう少し右に反れていたら良かったのにとは思いますが」
「君みたいな天然朴念仁な人間にはわからないだろ〜ね〜〜。エル、右に反れてたら人死にが出てるよ。私は構わないけど」

「そこ外野ッ!!恐ろしい事を言うなッ!!」

「って言うか、テメエいい加減に放せ―――うわッ!!?」

「…ナイヴス?」


「………」

「いきなり引っ張んなこの馬鹿ッ!!」
「……来い、レイン」
「はぁッ!?なんで?」
「着付けをし直してやる」
「へ?あ、ああ…、」
「髪も梳いてやる」
「お、おう?」

「こらナイヴス!貴様、人に刃物をブン投げておいてそれについてはスルーかッ!!?」

「―――これは失礼しました」
「どわぁッ!!ばッ、馬鹿モンッ!!いきなり抜くなッ!!危なッ!!」

「レイン、行くぞ」
「え、別に此処で直せば――」
「こらッ!!スルーすんなッ!!」

「行くぞ」
「……って、引っ張んなっ!!痛ぇッ!!てかッ、なんでテメーが怒ってんだよッ!!?
うわッ、ちょッ、痛いって――ッ!!」

「待たんか――ッ!!」


「…行ってしまいましたね」
「そのようだな」
「おやおや。レイン、無事だといいねぇ」

「?どうして?着付けをしに行っただけなのに」

「ノワールはわからなくていいんだよ〜。それよりあの二人は当分戻って来ないから、私達だけで食事を楽しもうよ」

「でも…」

「あ〜、そこの酔いどれセクハラ親父は放っておいていいからいいから」
「いいのか?」
「ならば君が構ってあげるといい。親父同士仲良くしたらいいさ」
「俺はお前よりも年下なのだが――」
「実年齢じゃなくて見た目だよ。うるさいなッ!!」

「ああ、確かに」
「エル…」
「それにしても――今日の彼は変ですね」
「ああ〜、そうだよねぇ、いい加減自分の本心に気付いて貰いたいもんだよ。
あちらこちらとどっちつかずでいい迷惑だ」

「?言っている意味がわかりませんが…」
「私にもよくわからない…」
「だからノワールはわからなくていいんだよ。さあ、いただくとしようじゃないか」


「う、うん…??」







畳の弁償は勿論ゼクスがします(-△-)