I らいる
――パタン
「…………はぁ」
「おや、ナイヴスは一緒じゃなかったのかい?」
「――――!!」
「ああごめん、驚かせたみたいだね」
「――起きてたのかよ」
「ん〜〜…こんな男臭い部屋で、熟睡出来る神経の持ち主じゃあないからね」
「思いっきり図太い神経持ってんじゃねーか」
「ん?特製オリジナル栄養ドリンクが飲みたいって?」
「言ってねえ!」
「こらこら、大きな声出さないの。皆寝てるんだよ」
「――――ッチ」
「お風呂に入ってきたのかな?なんならあっちで一緒に呑む?」
「…オマエからの酒はいらん」
「はっはっは、嫌だなぁ。もうあんなことしないよ。本当にいいのがあるみたいだから呑もう」
「――いい、…んな気分じゃねえし」
「んん?どうしたのかな?」
「別に…疲れてるだけだ。寝る」
「――ナイヴスに何かされたかな?」
「――――ッ!!」
「わかりやすいなあレインは。何?風呂場で押し倒されでもしたの?」
「押し――ッ!?ばッ、馬鹿だろオマエッ!!!」
「静かに。皆寝てるんだよ」
「うるせえ!オマエが馬鹿なこというからだろーがッ!!」
「はいはい、とにかく静かにする。ほら、こっちにおいで。座って話を聞いてあげるから」
「いらん!」
「はい、これなんか呑みやすいよ」
「……人の話聞けよ――ハァ…」
「よく冷えてるしアルコール度も低いから、風呂上りにはいいんじゃないかな」
「―――ハァ」
「溜息ばっかりついてると幸せが逃げちゃうよ〜」
「ほっとけ」
「呑むだろう?」
「……貰う」
「……で?」
「……なんだよ?」
「『なんだよ?』じゃないでしょ。わかってるくせに――ナイヴスに何をされたんだい?」
「――ッ、何もッ、されてねえッ!!」
「ふ〜〜ん、じゃあ何か言われたのかな?」
「――――ッ」
「だからわかりやすいよ、レイン」
「…うるせぇ」
「告白でもされたかな?」
「…………………」
「おや、大当たり?」
「……うるせえ」
「君ね、本当に気付いてなかった?」
「…何がだよ」
「だから、ナイヴスの気持ちに」
「――ッ、知るかッ!!クソッ、血迷ったこと言いやがって…ッ」
「ん〜〜その顔じゃあ、本当に気付いてなかったみたいだねえ。
まあ今までの君の発言から見て、そうだろうとは思ってたけど――レイン、君、鈍すぎだろう」
「鈍いとかッ!そーゆーことじゃねーだろッ!!?誰がンなこと思うよッ!?」
「まあ普通はそうだろうね」
「大体アイツ、ノワールのこと好きだったじゃねーか!」
「そうだと思っていたんだろうね、本人も」
「だったら――」
「でも、いざ蓋を開けてみると違っていたと」
「なんだよソレ!?んな蓋いつ開けたッ!!!」
「こらこら、だから大きな声を出さない。ホラ、もう少し注いであげるから呑んで落ち着きなさい」
「――――…」
「ファームにいる時に、君にあんな風に絡む相手はいなかったからね」
「?」
「なんだかんだ言って、ナイヴスはノワール以外にも――君を含めて世話焼きだっただろう?
だからナイヴス自身も自覚がなかったんだろうね。
それが今回、何をどーしてこうなったかは知らないけど、あんな連中と旅行なんかする羽目になって」
「あんな連中ってオマエ…」
「目の前で自分以外が君に世話を焼いている姿を見て、焦燥感を得たんだろうね」
「なんでだよッ!?」
「だから、無自覚だったって言ってるんだよ。
一緒に居るのが当たり前になってしまっていたから、近くに居すぎて見えなくなってしまってたんだね」
「だ、だからって――」
「頭よりも先に本能が動いてしまってたから、奇行に出るし」
「――――ッ」
「周りが見えなくなって、しなくてもいい嫉妬もしてたんだよ。全くもっていい迷惑でしかなかったけどね」
「…俺のせいじゃ…ねえ」
「誰も君のせいだなんて言ってないよ。君は気付いていなかったしね。あれだけされてて気付かなかった事には驚きだけど」
「だから、それは…ッ」
「うんうん、予想もしなかったんだから仕方ないね」
「それも、ある――けど……って、あれ――?」
「ん?どうしたのかな」
「んん…クソ……やたら、眠…テメ…ッ、またなんか…」
「失礼な事を言うんじゃないよ。風呂上りで体温上がってるところにアルコールが入ったからかな?もう横になるかい?」
「――…アイツ…言ったじゃ、ねえか…」
「ん?」
「すっげー…真面、目な顔し…て……」
「レイン?」
「アイツは…俺のこと、…友だ……ちだ…って…―――」
「レイン?」
「―――…」
「――レイン?」
「ス―――…」
「おや、寝ちゃった」
「よく言う――オマエさん、またなんか盛っただろう?」
「なんだい?盗み聞きとはいい趣味じゃないか」
「アホか。こんな狭い部屋で話しといて何を言う。聞いてくれと言わんばかりだろう」
「そうですね」
「んん?エル、君まで聞いていたのかな」
「ゼクスではありませんが、それこそ聞けと言っていたようなものでしょう。
他人のいる部屋で熟睡など出来るはずがないことくらい、身をもってわかっているでしょう」
「そうかい?そこの朴念仁は眠っているみたいだよ」
「いちいちソードに絡むな」
「起きているでしょう。ただ、自身に関係のない話なので耳に入れていないだけですよ」
「そう言うことだ。クリムソン、ソイツを布団に入れてやれ。風邪ひくぞ」
「え〜〜?私が運ぶのかい?」
「ご自分で酔い潰したのならば最後まで面倒を見るべきでしょう」
「人を悪人みたいな言い方しないでくれるかな!言っておくけど私はレインのためを思って――、」
「薬を盛ったのか?」
「えげつないですね」
「君達ッ!何か誤解をしてないかい!?レインの意識を失わせて、私が得する事のなんて一つもないんだよッ!!」
「悪戯でもするのかと」
「な・ん・で!私が男に何かしなきゃならないんだい?気色が悪いッ!!混ぜたのは精神安定剤みたいなものだよ!」
「なんだ、やっぱり盛ったんじゃないか」
「語るに落ちましたね」
「だーかーらーー!別にヘンなものは飲ませてないだろう?
極度の興奮状態にあるようだったから、落ち着かせるために飲ませたんだよ!
――まあ、酒に混ぜて飲ませるものではなかったかもしれないけどね」
「コイツ学習能力ないのか?さっきもオマエにやられてたのに」
「それだけクリムソンを信用しているのでしょう。本人に言ったら怒るでしょうが。
表面には出さないようにしていたようですが、彼の言うとおり通常の状態とは違っていた様子ですし」
「普段は感情の起伏が激しいくせに、言いたくないことや知られたくないことに関しては、
驚くくらい上手に隠す子なんだけどね――今回はそれすらも出来なかったみたいだよ――っと、」
「そりゃあ気の毒に――って!オイッ!!?」
「うるさいよゼクス」
「こらまてクリムソン!?なんで俺の布団にコイツを入れるッ!!?」
「え〜〜、だってレインの布団まで運ぶの重いし」
「距離的にそう変わりませんが…」
「エルを踏ん付けてっていいんなら、レインの布団まで運ぶんだけどね〜〜」
「どうぞゼクスの布団に」
「オイオイ待て待てッ!!!」
「あ〜〜重かった」
「重かったじゃないッ!!!あ、コラッ!!毛布をかぶせるな!」
「うるさいなあ」
「あーもうッ!いいッ!貸せッ!俺が運ぶ――ってかなんでコイツ起きないんだ?
こんだけされてりゃー普通目を覚ますだろうが」
「疲れてたんじゃないかな。肉体的にも精神的にも」
「オマエにも原因があるんじゃないのか…?」
「さ〜て、なんのことやら」
「全く――…?オイ、コイツ毛布放さんぞ」
「完全に熟睡状態ですね。無理に起こさなくても同衾したらどうですか」
「恐ろしいことをサラリと言うな!!」
「いいんじゃない?レイン細いし薄いから、そんなに邪魔にはならないよ」
「薄いとか細いとか、褒め言葉じゃないだろう――っつうか、クリムソン、オマエ面白がってるな?
この状態でナイヴスが帰ってきたら恐ろしい事になるぞ」
「修羅場というヤツですね」
「エル、使い方が違う!――ハァ、仕方がない。此処で寝かせる。俺がレインの布団に行けば済む話だ」
「済まないでしょ。この状態のレインとナイヴスの布団が隣同士なんて笑えない冗談だ」
「……ならオマエがナイヴスの布団に行け。んで俺がオマエの布団に行けば、
そこのレインの布団が空く事になるからナイヴスが帰ってきた時にも寝やすいだろう」
「え〜〜?男が一度横になった布団に入れと言うのかい?何の拷問なんだか…」
「つべこべぬかすな。大体オマエがコイツに一服盛ったりなんぞするから――」
「はいはい。全くナイヴスも余計なことをしてくれたものだね」
「それについては同感だ。コイツしょげてなかったか?」
「ま、それについては張本人が戻ってきたら話をしようじゃないか」
「クリムソン、布団をかわりましょうか?ナイヴスと話をするのであれば隣同士のほうが――」
「断る!!視界に不快なものが目に映るじゃないか!!」
「――ああ、ソードですか」
「不快とはなんだ」
「うるさいよッ!!喋らないでくれるかなッ!!!」
「ソード、いちいちコイツの言う事は気にせんで寝てくれ」
「そういうことなら代わらないほうが良さそうですね」
「そうしてくれ。とりあえずもう寝るぞ――ったく、今何時だと思ってるんだ」
「深夜の2時半すぎですね」
「律儀に答えるな」
「んん?もうそんな時間ってことは――ナイヴス、戻ってくるのが遅くないかい?」
「そういやそうだな」
「どこかの誰かのようにサウナで倒れてるんじゃないですか」
「ナイヴスはそんな馬鹿なことはしないよ。そんな馬鹿なことは」
「―――」
「クリムソン、二度言うな。ソードも気にすんな」
「まあ大方の予想は付くから、放っておいても大丈夫かな」
「いいのか?」
「どうせショックでも受けて呆けてるんだろう」
「?」
「レインが逃げ帰って来たみたいだからね」
「ああ――そういうことか」
「そういうこと。じゃあ気にしないで休もう。本当に疲れてるんだよ私は」
「自業自得って言葉知ってるか?」
「ゼクス――明日の朝、ちゃんと目覚めれたらいいねえ?」
「恐い事いうなっつーの!!!」
「うるさいですよ。眠ると決めたのでしたらとっとと寝てください。いい迷惑です」
「…オマエさん、本ッッ当に遠慮がないのな…」
続
愛されレイン…らいるの願望デス(笑)
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